キース・ジャレットの名盤10選|ケルン・コンサートから辿る聴き方

キース・ジャレットの名盤10選|ケルン・コンサートから辿る聴き方 のイメージ

「キース・ジャレットって、どのアルバムから聴けばいいの?」「即興のソロって難しそう」「『ケルン・コンサート』が有名なのは知っているけれど、その先は?」──作品数が膨大なキース・ジャレットは、入り口で立ち止まりやすいピアニストです。結論から言えば、まずは誰もが聴きやすい『ケルン・コンサート』から始め、ソロ・トリオ・カルテットへと少しずつ世界を広げていくのが王道です。本記事では、キース・ジャレットの人物像、名盤の選び方と聴く順番、代表作10選、そして一杯とともに味わう楽しみ方まで、麻布十番のジャズバーTOMIJAZが解説します。

キース・ジャレットは、ソロ・スタンダーズ・トリオ・カルテットという三つの顔を持つ即興ピアノの巨人です。名盤10選(1971〜1998年録音)は親しみやすい順に並べ、1枚目は1975年の『ケルン・コンサート』、10枚目は6時間半を超えるソロ・ボックス『サンベア・コンサート』。前半5枚でソロ・トリオ・カルテットを一通り味わい、後半5枚でソロとカルテットの腰を据えて向き合いたい作品へ進む構成です。

『ケルン・コンサート』は、1975年1月24日のケルン歌劇場での一夜から生まれました。ジャレットが要望したベーゼンドルファーの大型コンサートグランドが用意されず、舞台にはリハーサル用の小型ベビーグランドだけ。高音は薄く低音は弱く、ペダルも不調という状態でした。長旅と寝不足、背中の痛みで消耗していたジャレットは一度は演奏を拒みますが、当時17歳のプロモーター、ヴェラ・ブランデスの説得で舞台に立ちます。響きの薄い高音・低音を避けて中音域に集中し、左手の反復で低音を補うという制約の中での全編即興が、のちに世界中で聴き継がれるロングセラーになりました。

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目次

1. キース・ジャレットとは|即興ピアノの巨人

キース・ジャレットは、その場で生まれる即興を音楽の核に据えたアメリカのピアニストです。クラシックの素養とジャズの衝動、ゴスペルやフォークの温かさを一つの手の中で結び、ソロ・トリオ・カルテットのいずれでも唯一無二の響きを築きました。まずは、その歩みと活動の全体像を押さえておきましょう。

1-1. 幼くして才能を現した神童から

キース・ジャレットは1945年5月8日、アメリカ・ペンシルヴェニア州アレンタウンに生まれました。3歳になる前にピアノを習い始め、7歳で自作曲を含むリサイタルを開いたという神童です。10代でジャズに傾倒し、バークリー音楽大学で学んだのち、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズやチャールス・ロイドのグループで頭角を現しました。

1-2. マイルス・デイヴィスのバンドからソロの道へ

1970年前後には、エレクトリック期のマイルス・デイヴィスのバンドにも参加し、電気鍵盤を担いました。しかしジャレットが本領を発揮したのはアコースティック・ピアノの世界です。ドイツのレーベルECMと出会い、曲を決めずに舞台に上がり、一晩を丸ごと即興で紡ぐ「ソロ・コンサート」という表現を切り拓いて、ジャズピアノの地図を書き換えていきました。

1-3. 三つの顔:ソロ・トリオ・カルテット

ジャレットの活動は、大きく三つに分けると見通しが良くなります。第一に、完全即興のソロ・コンサート。第二に、ゲイリー・ピーコック(ベース)とジャック・ディジョネット(ドラムス)と組み、スタンダードを深く掘り下げたスタンダーズ・トリオ。第三に、ヤン・ガルバレクらと自作曲を演奏したヨーロピアン・カルテットや、アメリカ人仲間とのアメリカン・カルテットです。この三つを意識すると、膨大な作品が一気に整理されます。

2. 名盤10選の選び方と聴く順番

キース・ジャレットは録音数が非常に多く、やみくもに手を伸ばすと迷子になりがちです。ここでは、本記事の10選をどんな基準で並べ、どの順で聴けばよいかを先にお伝えします。

2-1. 「ケルン・コンサート」から辿る理由

最初の一枚に『ケルン・コンサート』を置くのには理由があります。全編即興でありながら旋律が美しく、ジャズに不慣れな方でも「心地よい」と感じやすいからです。ここで即興ピアノの気持ちよさを体験しておくと、ソロ以外のトリオやカルテットの作品に進んだときも、ジャレットの多彩さがすっと腑に落ちます。

2-2. 親しみやすい順に番号を振っています

この10選は、親しみやすい代表作を前半に、じっくり時間をかけて向き合いたい作品を後半に置き、聴きやすい順を目安に番号を振っています。迷ったら1枚目の『ケルン・コンサート』から順に聴き進めてください。番号はあくまで聴き始めやすさの目安で、優劣のランキングではありません。はじめてジャズに触れる方は、ジャズ初心者向けの名盤入門と併せて読むと、全体像がつかみやすくなります。

聴く順番に迷ったら、前半(1〜5枚目)でソロ・トリオ・カルテットを一通り聴いてみてください。ソロが気に入ったら3-7・3-9・3-10へ、カルテットが気に入ったら3-6・3-8へ進むのがおすすめです。トリオは前半の2枚(3-4・3-5)が入り口にも本命にもなります。「難しそう」と身構える必要はありません。

2-3. 聴くときの環境づくり

ジャレットのソロは、音と音の間の「静けさ」にこそ味わいがあります。できれば夜、音量をやや絞り、ほかの作業の手を止めて聴いてみてください。グラスを傾けながら一音ずつ追ううちに、即興が物語のように流れていくのが分かります。

3. キース・ジャレットの名盤10選

ここからが本題の10選です。各作品に、録音年・編成・聴きどころを記しました。前述のとおり親しみやすい順に並べていますので、上から順に聴き進めるのが最もスムーズです。

3-1. ケルン・コンサート(1975)|全編即興のソロ・コンサート

1975年1月24日、ケルン歌劇場での完全即興のソロ・ライヴ。不調なピアノという逆境から生まれたとは思えないほど旋律が美しく、左手の反復に右手の歌が重なっていく展開は、何度聴いても胸を打ちます。ジャレットの代名詞として世界中で聴き継がれてきた、入門の決定版です。まずはこの一枚から。

ケルン・コンサート
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3-2. マイ・ソング(1978)|ヨーロピアン・カルテットの代表作

ヤン・ガルバレク(サックス)、パレ・ダニエルソン(ベース)、ヨン・クリステンセン(ドラムス)とのヨーロピアン・カルテット第2作。1977年オスロ録音で、全曲がジャレットのオリジナルです。北欧的な透明感とガルバレクの伸びやかなサックスが溶け合い、タイトル曲の優しい旋律は初めての方にもすっと届きます。ソロに親しんだ方が、編成ものへ広げる一枚として最適です。

マイ・ソング
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3-3. メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー(1999)|ささやくようなバラードのソロ

慢性疲労症候群による療養期、1998年に自宅スタジオで録音されたソロ作。デューク・エリントンやガーシュウィン、ジェローム・カーンらのバラードと、伝統歌をそっと奏でた、ささやくような一枚です。技巧を誇示せず、一音一音に祈りのような静けさが宿ります。夜更けによく似合う、親しみやすい入り口の一つです。

3-4. スタンダーズ Vol.1(1983)|トリオで聴く定番曲

ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットと組んだスタンダーズ・トリオの記念すべき第1作。1983年1月録音で、「オール・ザ・シングス・ユー・アー」「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」など5曲のスタンダードを深く掘り下げています。耳なじみのある旋律を手がかりに、三者の即興の対話がどう展開するかを味わえるので、トリオ入門に最適。ビル・エヴァンスのトリオが好きな方にも響くはずです。

スタンダーズ Vol.1
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3-5. スティル・ライヴ(枯葉)(1988)|トリオのライヴの熱量

1986年7月、ミュンヘンでのスタンダーズ・トリオのライヴを収めた2枚組で、日本盤は『枯葉』の邦題でも親しまれています。聴衆を前にした三者が刺激し合う熱量が、生々しく伝わります。親しみやすいスタンダードを土台にしながら、即興がぐんと伸びていく瞬間が随所にあり、「トリオの面白さ」を体感できる一枚です。

3-6. ビロンギング(1974)|ヨーロピアン・カルテットの出発点

同じヨーロピアン・カルテットの第1作で、1974年オスロ録音。しなやかなバラードと疾走する楽曲が織り交ぜられ、ジャレットのペンによる楽曲の幅広さが詰まっています。ここから後半は、少し腰を据えて聴きたい作品が増えていきます。カルテットの推進力を味わいたい方に。

3-7. フェイシング・ユー(1972)|初のスタジオ・ソロ

ECMでの第1作にして、ジャレット初のスタジオ・ソロ。1971年オスロ録音で、オリジナル曲を軸に構成されています。ライヴの高揚とは異なり、作曲家としての一面がくっきりと表れた内省的な作品で、短い小品が組曲のように連なります。ソロの原点を知りたくなったら、ぜひこの一枚へ。

フェイシング・ユー
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3-8. サバイバーズ・スイート(1977)|アメリカン・カルテットの到達点

デューイ・レッドマン(テナーサックス)、チャーリー・ヘイデン(ベース)、ポール・モチアン(ドラムス)とのアメリカン・カルテットによる作品で、1976年録音。一つの組曲を「ビギニング」「コンクルージョン」の2部に分け、LPの表裏をそれぞれ使い切る構成で、自由度の高い集団即興が繰り広げられます。ジャレットが複数の楽器も手にする、骨太で深い一枚です。

3-9. ウィーン・コンサート(1992)|円熟のソロ・コンサート

1991年7月、ウィーン国立歌劇場での全編即興のソロ・ライヴ。68分が二つの長い楽章に分かれ、『ケルン・コンサート』から十数年を経た円熟の即興が味わえます。ジャレット自身が高く評価した公演として知られ、ソロの深みをもう一歩味わいたくなったときの一枚です。腰を据えて向き合いたい作品です。

3-10. サンベア・コンサート(1978)|日本で録音された大作ボックス

1976年11月、京都・大阪・名古屋・東京・札幌で行われた5公演を収めた、6時間半を超えるソロ・コンサートのボックスです。即興ピアノに深くのめり込んだ方のための「大本命」で、ジャレットの発想がどこまでも展開していく様子を存分に辿れます。じっくり時間をかけて向き合う、最後の一枚にふさわしい大作です。

4. キース・ジャレットを一杯とともに楽しむ

ジャレットの音楽は、静かな夜に一杯を傍らに置いて聴くと、より深く沁み込みます。最後に、作品の表情に合わせた飲み物の合わせ方を提案します。

4-1. ソロ・ピアノに寄り添う一杯

『メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』のような静かなソロや、『ケルン・コンサート』の歌うような旋律には、香りをゆっくり追えるシングルモルトのストレートがよく合います。余韻の長い一杯を小さく口に含みながら、音の余白を味わってみてください。

4-2. トリオ・カルテットの熱量に合わせて

『スティル・ライヴ』や『サバイバーズ・スイート』のように推進力のある作品には、ジンジャーの刺激が効いたモスコミュールや、スモーキーで個性の立ったアイラ系モルトを合わせると、演奏の熱に飲み物が寄り添います。お好みの一杯とともに、ジャレットの多彩な表情を楽しんでみてください。

麻布十番でジャズピアノの名盤を味わうなら:TOMIJAZのご案内

麻布十番のジャズバー TOMIJAZ では、ジャズの調べが流れるなか、静かなソロに寄り添うストレートには山崎・白州やグレンモーレンジ12年、熱量のあるトリオやカルテットにはアイラのアードベッグ10年・ラフロイグ10年を、いずれもグラス一杯からお楽しみいただけます。ジンジャーの効いたモスコミュールもご用意しています。聴きたい気分をカウンターでお伝えいただければ、バーテンダーが一杯をご案内します。また不定期でライブ演奏も行っており、日程や出演者はトップページのライブ情報でご確認いただけます。ジャズの余韻とともに、大人の夜をお過ごしください。

所在地〒106-0045 東京都港区麻布十番2-8-3 ディケンズ麻布 3F
営業時間月〜水 19:00〜24:00(L.O. 23:30)/木・金 19:00〜翌2:00(L.O. 翌1:30)/土 19:00〜23:30(L.O. 23:00)
定休日日曜・祝祭日 ※土曜は不定休
アクセス東京メトロ南北線「麻布十番駅」4番出口/都営大江戸線「麻布十番駅」7番出口より徒歩3分
電話予約03-3454-5566 ※営業時間内のみ
ウェブ予約食べログ予約ページ

まとめ

キース・ジャレットは、全編即興のソロ・コンサート、ゲイリー・ピーコックらとのスタンダーズ・トリオ、ヤン・ガルバレクらとのヨーロピアン・カルテット(およびアメリカン・カルテット)という三つの顔を持つ即興ピアノの巨人です。本記事の名盤10選は親しみやすい順に番号を振っており、まずは1枚目の『ケルン・コンサート』から聴き始め、前半5枚でソロ・トリオ・カルテットを一通り味わうのが王道。前半の『マイ・ソング』『スタンダーズ Vol.1』などで好みの編成が見えたら、後半の『サバイバーズ・スイート』『ウィーン・コンサート』『サンベア・コンサート』へと、じっくり世界を広げてみてください。麻布十番のジャズバーTOMIJAZでは、ジャズの調べとともに一杯をお楽しみいただけます。お気軽にカウンターまでお越しください。

よくある質問(FAQ)

キース・ジャレットは最初にどのアルバムから聴くべきですか?

まずは『ケルン・コンサート』をおすすめします。全編即興でありながら旋律が美しく、ジャズに不慣れな方でも心地よく聴けるためです。本記事の10選は親しみやすい順に番号を振っているので、1枚目から順に聴き進めると無理なく世界が広がります。

スタンダーズ・トリオのメンバーは誰ですか?

ピアノのキース・ジャレット、ベースのゲイリー・ピーコック、ドラムスのジャック・ディジョネットの三人です。1983年の『スタンダーズ Vol.1』を皮切りに、長年にわたってスタンダードを深く掘り下げる名トリオとして活動しました。

ソロとトリオとカルテットは何が違うのですか?

ソロは完全即興のピアノ独奏、スタンダーズ・トリオは既存の名曲(スタンダード)をベース・ドラムスとともに掘り下げる形、ヨーロピアン/アメリカン・カルテットは主にジャレットのオリジナル曲を管楽器も交えて演奏する形です。三つの顔を意識すると作品を整理しやすくなります。

ジャズ初心者でもソロの即興は楽しめますか?

はい。『ケルン・コンサート』や『メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』は旋律がはっきりしていて、予備知識がなくても心地よく聴けます。夜に音量をやや絞り、音と音の間の静けさを味わうように聴くのがおすすめです。

『ケルン・コンサート』の不調なピアノの逸話は本当ですか?

ジャレットが要望した大型コンサートグランドが用意されず、舞台にはリハーサル用の小型ベビーグランドだけが置かれていたと伝えられます。高音は薄く低音は弱い状態で、ジャレットは一度は演奏を拒みましたが、プロモーターの説得で舞台に立ち、制約の中での全編即興が歴史的名盤になりました。

キース・ジャレットのCDはどのように選べばよいですか?

聴きたい表情で選ぶのが近道です。静かに浸りたいならソロ作、仲間との対話を楽しみたいならトリオ作、自作曲の世界観を味わいたいならカルテット作、という具合です。本記事の各作品に録音年と編成を記しているので、目安にしてください。

TOMIJAZではジャズを聴きながら飲めますか?

TOMIJAZではジャズの調べが流れるなか、山崎・白州などのジャパニーズウイスキーや、アードベッグ10年などのスコッチをグラス一杯からお楽しみいただけます。聴きたい気分をカウンターでお伝えいただければ、バーテンダーが一杯をご案内します。不定期でライブ演奏も行っています。

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この記事を書いた人

TOMIJAZ Bartenders(トミジャズ・バーテンダーズ)

麻布十番のジャズバーTOMIJAZの現役バーテンダーチーム。創業者・トミがニューヨーク20年・東京14年にわたり築いたジャズバーの歴史を、常連客からオーナーとなった株式会社Envalue代表の水野泰和が2022年11月より受け継いでいます。お酒・ジャズ・空間づくりに関する一次情報を、現場のカウンターから発信しています。

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