「クラフトビールって普通のビールと何が違うの?」「IPAやスタウトの味の見当がつかない」「種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない」──クラフトビールは入り口で迷いやすいお酒です。結論から言えば、クラフトビールは小規模な醸造所が造り手の個性を前面に出して仕込む、多彩なスタイル(ビアスタイル)を持つビールの総称で、味の方向性を決めるのは「スタイル」です。本記事では、クラフトビールとは何かという基礎から、選び方の指標、代表的な10スタイルの味わい、合うおつまみ、おいしく飲むコツまでを、麻布十番のジャズバーTOMIJAZが解説します。
クラフトビールに厳密な世界共通の定義はありませんが、鍵になるのは造り手の規模と、味を決める「スタイル」です。本記事ではペールエール、IPA、スタウト、ピルスナー、ヴァイツェンなど代表10スタイルを、順位ではなくスタイル別に紹介します。選ぶときの目安はスタイル・IBU(苦味の指標)・ABV(アルコール度数)・鮮度の4つ。一般的なクラフトビールの度数はおよそ4〜9%で、蒸留酒ではなく麦を発酵させた醸造酒です。
ビールそのものは古代メソポタミアにさかのぼる人類最古級の醸造酒ですが、「クラフトビール」という潮流は比較的新しいものです。1960年代以降のアメリカで、画一化した大量生産ビールへの反動として小規模醸造所(マイクロブルワリー)が各地に生まれ、個性的なスタイルが復興しました。日本では1994年の酒税法改正でビールの年間最低製造量が2,000キロリットルから60キロリットルへ引き下げられ、全国に小規模醸造所(当時は地ビールと呼ばれました)が誕生したのが出発点です。いま「クラフトビール」と呼ばれるものの多くは、この流れの先にあります。
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1. クラフトビールとは|大手のビールとの違い
まずは「クラフトビール」という言葉が指すものと、私たちが飲み慣れた大手のラガーとの違いを整理します。違いを一言でいえば、造り手の規模と、味づくりの自由度です。ビールがお酒全体のどこに位置づくかは、お酒の種類一覧もあわせてご覧ください。
1-1. 「クラフトビール」の定義
クラフトビールに世界共通の厳密な定義はありません。アメリカのビール醸造者団体では「小規模・独立した醸造所が造るビール」といった基準を設けていますが、国や団体で数値は異なります。共通しているのは、大量生産・大量流通を主目的とせず、造り手が原料や製法にこだわって個性を表現しているという点です。日本では法律上の区分ではなく、造り手の姿勢やスタイルの多様さを指す言葉として使われています。
1-2. 大手のラガーとの3つの違い
飲み慣れた大手ビールとクラフトビールの違いは、大きく次の3点に整理できます。
- スタイルの幅:大手の主力は淡色のラガー(ピルスナー系)が中心。クラフトビールはIPA・スタウト・ヴァイツェンなど数十種のスタイルを造り分けます。
- 原料と製法の自由度:ホップや麦芽の種類・使用量を大胆に変え、果実やスパイス、樽熟成を取り入れることもあります。
- 造り手の規模:小ロットで仕込むため、季節限定や実験的な一杯が生まれやすいのが特徴です。
1-3. エールとラガー|発酵方法の基本
スタイルを理解する土台になるのが、酵母の働き方による2分類です。エールは上面発酵で、常温に近い比較的高い温度で短期間発酵させ、フルーティーで華やかな香りが出やすいタイプ。ラガーは下面発酵で、低温でじっくり発酵・熟成させ、すっきりとキレのある味わいになりやすいタイプです。ペールエールやIPA、スタウトはエール、ピルスナーはラガーに分類されます。
まずは「華やかな香りを楽しみたいならエール、のどごしとキレならラガー」と覚えておくと、スタイル選びの軸ができます。
2. クラフトビールの選び方|4つの指標
種類が多くて選べない、というときは4つの指標で絞り込むと迷いません。味の方向を決める「スタイル」、飲みごたえを左右する「IBUとABV」、そしておいしさを守る「鮮度」です。
2-1. スタイル(ビアスタイル)で選ぶ
クラフトビール選びで最も大切なのがスタイルです。スタイルとは、原料・製法・発祥地などによって体系化されたビールの型のことで、これが味わいの大枠を決めます。苦味を楽しみたいならIPA、香ばしさと甘みならスタウト、爽やかさならピルスナーやヴァイツェン、というように、好みの方向からスタイルを選ぶのが遠回りのない選び方です。次章で代表10スタイルを紹介します。
いろいろなスタイルを少量ずつ試したいときは、複数スタイルが入った飲み比べセットが便利です。
2-2. IBU(苦味)とABV(度数)で選ぶ
IBU(International Bitterness Units)はホップ由来の苦味を数値化した指標で、数字が大きいほど苦味を強く感じやすくなります。ピルスナーは20〜40程度、IPAは40〜70以上と幅があります。ABV(Alcohol By Volume)はアルコール度数で、クラフトビールはおよそ4〜9%が中心。IPAやスタウトには度数が高めのものもあるため、飲む場面に合わせて選びましょう。
2-3. 鮮度と保存で選ぶ
クラフトビール、とくにホップの香りが主役のIPA系は鮮度が命です。ホップの華やかな香りは時間とともに失われるため、製造日が新しいものを選び、買ったら早めに飲み切るのが基本。保存は光と高温を避け、冷蔵庫で立てて保管します。缶や瓶を横に寝かせると、澱のあるタイプでは風味が落ちる場合があります。
3. クラフトビールおすすめ10選【スタイル別】
ここからは代表的な10のスタイルを紹介します。以下はランキングではなく、味の方向が近いものを意識しつつスタイル別に並べたものです。番号は順位ではないので、気になったスタイルから試してみてください。
3-1. ペールエール
クラフトビール入門の定番といえるエール。淡い銅色で、ホップの柑橘やハーブのような香りと、ほどよい苦味・麦芽の甘みのバランスが取れたスタイルです。IPAほど苦味は強くないため、大手ラガーからの一杯目として飲みやすく、料理とも幅広く合わせられます。
3-2. IPA(インディア・ペールエール)
クラフトビールの象徴ともいえるスタイル。ホップを大量に使い、柑橘やトロピカルフルーツを思わせる華やかな香りと、はっきりした苦味が特徴です。近年は苦味を抑えて香りを重視した「ヘイジーIPA」も人気。IBUが高めなので、苦味と香りをしっかり楽しみたい方に向きます。
3-3. セッションIPA
IPAの香りはそのままに、アルコール度数を4〜5%前後に抑えたスタイル。「セッション」は長時間ゆっくり楽しめるという意味合いで、IPAの華やかさを味わいたいけれど度数は控えめにしたいという場面にぴったりです。食中酒としても重宝します。
3-4. スタウト
黒く焙煎した麦芽を使う、濃色のエール。コーヒーやカカオ、ローストしたような香ばしさと、なめらかな口当たりが魅力です。アイルランドのドライスタウトは意外にも度数控えめでのど越しが良く、デザートやチョコレートと合わせると真価を発揮します。ジャズを聴きながら夜にゆっくり傾けたい一杯です。
3-5. ポーター
スタウトと近縁の濃色エールで、歴史的には18世紀ロンドンで生まれ、後により濃厚なタイプが「スタウト・ポーター」と呼ばれたのが両者の関係とされます。ポーターはスタウトよりやや軽やかで、チョコレートやカラメルの甘やかな香ばしさが前に出ます。濃色ビールの入門として飲みやすいスタイルです。
3-6. ピルスナー
1842年にチェコのプルゼニ(ピルゼン)で生まれた、淡色ラガーの原型。澄んだ黄金色と、ホップの上品な苦味・すっきりしたキレが身上です。日本の大手ビールの多くもこの系統で、クラフトの造り手が手がけるピルスナーは、麦芽やホップの質の違いが素直に表れるスタイル。ビールの基準を知るうえで押さえておきたい一杯です。
3-7. ヴァイツェン(小麦のビール)
大麦に加えて小麦を多く使う、南ドイツ発祥のエール。酵母を濾さないヘーフェヴァイツェンは、バナナやクローブ(丁子)を思わせる独特の香りと、白濁したやわらかな口当たりが特徴です。苦味が穏やかで、ビールの苦さが苦手な方にもすすめやすいスタイルです。
3-8. ベルジャンホワイト(ウィットビア)
小麦を使うベルギー発祥のエールで、コリアンダー(パクチーの種)とオレンジピールで香りづけするのが伝統的な製法です。白濁した見た目とスパイシーで爽やかな柑橘の香りが特徴で、暑い季節や食前の一杯に向きます。ヴァイツェンとは香りの出どころが異なります。
3-9. セゾン
ベルギー南部の農家で、農閑期に仕込み夏に飲むために造られたことに由来する「ファームハウス・エール」。ドライな飲み口とスパイシーで複雑な香り、しっかりした炭酸が特徴です。個性的ながら食事を選ばず、料理と合わせやすいオールラウンダーとして人気があります。
3-10. フルーツ/サワーエール
果実を加えたフルーツビールや、乳酸などの働きで酸味を持たせたサワーエールは、ビールらしい苦味が穏やかで、ワインのような酸味や果実味を楽しめるスタイルです。ビールが得意でない方や、食後・乾杯の一杯として選ばれることも多く、クラフトビールの多様さを象徴する存在です。
4. クラフトビールに合うおつまみとペアリング
クラフトビールはスタイルの幅が広いぶん、合わせる料理の選択肢も豊かです。ペアリングの基本は「同じ強さ・同じ方向で寄せる」こと。具体的なおつまみはジャズに合うおつまみも参考になります。
4-1. スタイル別の相性
- ペールエール・ピルスナー:唐揚げやフライドポテト、塩気のあるナッツ。爽やかな苦味が油をすっきり流します。
- IPA:スパイシーなエスニック料理や、熟成したハードチーズ。強い香りと苦味に負けない味を。
- スタウト・ポーター:チョコレートやビターなデザート、生ハム。焙煎の香ばしさと好相性です。
- ヴァイツェン・ベルジャンホワイト:白身魚やサラダ、柑橘を使った料理。爽やかな香りを引き立てます。
4-2. ジャズと合わせる夜の一杯
クラフトビールは、その日の気分や音楽に合わせて選ぶのも楽しみ方のひとつです。軽快なスウィングには爽やかなピルスナーやペールエール、しっとりしたバラードには香ばしいスタウトを、というように音と味を重ねると、一杯の満足度がぐっと高まります。バーでの頼み方に不安がある方はバー初心者ガイドもどうぞ。
5. クラフトビールをおいしく飲むコツ
同じ一本でも、温度・グラス・鮮度を意識するだけで香りと味わいは大きく変わります。
5-1. スタイルに合わせて温度を選ぶ
キンキンに冷やすほどおいしい、というわけではありません。ピルスナーやサワーエールは4〜7℃前後でよく冷やすと爽快さが際立ちますが、IPAやスタウトは8〜13℃前後とやや高めにすると、ホップや麦芽の複雑な香りが開きます。冷蔵庫から出して数分置くだけでも印象が変わります。
5-2. グラスに注いで香りを楽しむ
香りが主役のクラフトビールは、缶や瓶から直接ではなくグラスに注ぐのがおすすめです。適度な泡は香りを立ち上げ、口当たりをまろやかにします。ヴァイツェンには背の高いグラス、IPAには香りを集めるチューリップ型など、スタイルに合わせると一層楽しめます。
5-3. 買ったら早めに、冷暗所で
前述のとおりクラフトビールは鮮度が大切です。まとめ買いより飲み切れる量をこまめに購入し、光と高温を避けて冷蔵保存しましょう。賞味期限内でも、ホップの香りは日を追うごとに穏やかになります。とくにIPAは購入から早めに開けるのが正解です。
麻布十番のジャズバー TOMIJAZ では、ビールとしてサッポロ エビス(コクのあるラガー)、カールスバーグ(すっきりしたピルスナー)、ギネス ドラフト(なめらかなスタウト)の3種をご用意しています。クラフトビール専門店ではありませんが、本記事で解説した、コクのあるラガー・キレのあるピルスナー・香ばしいスタウトという3つの方向の「基準の味」を、この3杯で確かめていただけます。濃色ビールがお好きなら、チョコレートと合わせるギネスのなめらかな一杯がおすすめ。ジャズの調べに包まれながら、その日の気分に合う一杯をバーテンダーがご案内します。ウイスキーやカクテルも豊富に取り揃えていますので、二杯目からの飲み替えもお楽しみください。
| 所在地 | 〒106-0045 東京都港区麻布十番2-8-3 ディケンズ麻布 3F |
|---|---|
| 営業時間 | 月〜水 19:00〜24:00(L.O. 23:30)/木・金 19:00〜翌2:00(L.O. 翌1:30)/土 19:00〜23:30(L.O. 23:00) |
| 定休日 | 日曜・祝祭日 ※土曜は不定休 |
| アクセス | 東京メトロ南北線「麻布十番駅」4番出口/都営大江戸線「麻布十番駅」7番出口より徒歩3分 |
| 電話予約 | 03-3454-5566 ※営業時間内のみ |
| ウェブ予約 | 食べログ予約ページ |
まとめ
クラフトビールは、小規模な醸造所が個性を追求して造る、多彩なスタイルを持つビールの総称です。味わいを決めるのはスタイルで、ペールエールやピルスナーの飲みやすいものから、IPAの華やかな苦味、スタウトの香ばしい甘みまで幅広く楽しめます。選ぶときはスタイル・IBU・ABV・鮮度の4つを目安に、温度とグラスを少し意識するだけで、家庭でも香りが大きく開きます。麻布十番のジャズバーTOMIJAZでは、ラガーのコク・ピルスナーのキレ・スタウトの香ばしさという基準になる3杯を、ジャズの流れる空間でお楽しみいただけます。気になるスタイルが見つかったら、ぜひカウンターで一杯目を選んでみてください。
よくある質問(FAQ)
- クラフトビールと普通のビールの違いは何ですか?
-
厳密な世界共通の定義はありませんが、鍵になるのは造り手の規模と味づくりの自由度です。大手の主力は淡色のラガー(ピルスナー系)が中心なのに対し、クラフトビールは小規模な醸造所がIPAやスタウトなど数十種のスタイルを個性的に造り分けます。
- クラフトビール初心者は何から選べばよいですか?
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まずは苦味が穏やかで香りが華やかなペールエールやヴァイツェンが親しみやすいです。いろいろ試したい場合は、複数スタイルが入った飲み比べセットで好みの方向を見つけるのもおすすめです。順番にこだわらず、気になったスタイルから試してみてください。
- IPAはなぜ苦いのですか?
-
IPA(インディア・ペールエール)はホップを大量に使うスタイルだからです。ホップは苦味と香りをもたらす原料で、使用量が多いほど苦味の指標であるIBUが高くなります。近年は苦味を抑えて香りを重視したヘイジーIPAも増えています。
- クラフトビールの度数はどのくらいですか?
-
スタイルによりますが、一般的にはおよそ4〜9%が中心です。ビールは麦を発酵させた醸造酒で、40度前後の蒸留酒であるウイスキーなどとは度数帯が大きく異なります。度数を抑えたいときはセッションIPAなど低アルコールのスタイルが向きます。
- クラフトビールはどう保存すればよいですか?
-
光と高温を避け、冷蔵庫で立てて保存するのが基本です。とくに香りが主役のIPA系は鮮度が命なので、製造日の新しいものを選び、買ったら早めに飲み切りましょう。賞味期限内でもホップの香りは日を追うごとに穏やかになります。
- スタウトとポーターはどう違いますか?
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どちらも黒く焙煎した麦芽を使う濃色エールで近縁です。歴史的には18世紀ロンドンのポーターから、より濃厚なタイプが「スタウト・ポーター」と呼ばれたのが両者の関係とされます。一般にポーターはやや軽やか、スタウトはよりコクと香ばしさが強い傾向があります。
- TOMIJAZではクラフトビールを飲めますか?
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クラフトビール専門店ではありませんが、サッポロ エビス(ラガー)、カールスバーグ(ピルスナー)、ギネス ドラフト(スタウト)の3種をご用意しています。本記事で解説した基本スタイルの「基準の味」を確かめる一杯として、ジャズの流れる空間でお楽しみいただけます。
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TOMIJAZ Bartenders(トミジャズ・バーテンダーズ)
麻布十番のジャズバーTOMIJAZの現役バーテンダーチーム。創業者・トミがニューヨーク20年・東京14年にわたり築いたジャズバーの歴史を、常連客からオーナーとなった株式会社Envalue代表の水野泰和が2022年11月より受け継いでいます。お酒・ジャズ・空間づくりに関する一次情報を、現場のカウンターから発信しています。


