オスカー・ピーターソンの名盤10選|超絶技巧を味わう聴く順番と魅力

夜のサパークラブの小さなステージに、蓋を大きく開けた黒いフルコンサートグランドピアノが置かれ、スポットライトが鍵盤を照らしている。すぐ横にウッドベース、奥にドラムセットが並び、手前の小さなテーブルには大きな氷のウイスキーのロックグラスが琥珀色に光っている

「オスカー・ピーターソンは名盤が多すぎて、どれから聴けばいいか分からない」「超絶技巧と言われるが、何がそんなにすごいのか聴き取れない」——そんな戸惑いをよく耳にします。結論から言えば、親しみやすいスタンダード集『プリーズ・リクエスト』から聴き始め、ライヴやソロの超絶技巧盤へと順に進むと、その魅力が無理なく分かります。本記事では、人物像と演奏スタイル、名盤を聴く順番の考え方、代表作10枚の聴きどころ、超絶技巧を味わう3つのポイントまでを、麻布十番のジャズバーTOMIJAZが解説します。

オスカー・ピーターソン(1925〜2007年)は、両手の高速なランと分厚いブロックコードで知られるカナダ出身の超絶技巧ピアニストです。本記事は「親しみやすい入門盤から、技巧と自由度が増す作品へ」という1つの基準で10枚を並べています(年代順ではありません)。10選は、スタンダード集『プリーズ・リクエスト』(1964年)から始まり、ソロ盤『マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント』(1968年)を経て、グラミー受賞盤『ザ・トリオ』(1973年)に至ります。聴きどころは、右手の高速ラン、ベースとの一体感、バラードの歌わせ方の3点です。

オスカー・ピーターソンは1925年、カナダ・モントリオールのリトル・バーガンディ地区に生まれ、幼少期からクラシック・ピアノで研鑽を積みました。1949年、興行主ノーマン・グランツがニューヨークのカーネギー・ホールでの「ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック」に飛び入り出演させたことで、一躍注目を集めます。その圧倒的な演奏力から、デューク・エリントンが「鍵盤のマハラジャ」と呼んだと伝えられています。2007年に82歳で世を去るまで、半世紀以上にわたり第一線で弾き続けました。

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目次

1. オスカー・ピーターソンとは|「鍵盤のマハラジャ」と呼ばれた超絶技巧

オスカー・ピーターソン(1925〜2007年)は、カナダ出身のジャズ・ピアニストです。超人的な演奏技術で知られ、生涯に数多くの名盤を残しました。まずは人物像と、よく語られる「超絶技巧」の中身を押さえておきましょう。

1-1. 生涯と歩み|カナダから世界へ

1925年にカナダ・モントリオールで生まれ、幼少期からクラシック・ピアノで研鑽を積みました。1949年にニューヨークのカーネギー・ホールで注目を集めて以降、半世紀以上にわたり第一線で活躍します。レイ・ブラウンらとのトリオを中心に、ソロやデュオ、ビッグバンドまで幅広く録音を残し、2007年に82歳で世を去りました。

1-2. 「超絶技巧」とは何か|演奏スタイルの特徴

ピーターソンの演奏は、右手による高速で正確な単音のラン(走句)と、両手で積み上げる分厚いブロックコードが大きな特徴です。加えて、ベースやドラムと一体になった力強いスウィング感が、聴き手を自然に高揚させます。技術の速さだけでなく、歌心あふれるメロディ表現も兼ね備えている点が、長く愛される理由です。ピアノやベースなどジャズの楽器の役割を知っておくと、その凄さがより立体的に聴こえてきます。

2. 名盤を聴く順番|本記事の並べ方

名盤が多いピーターソンだからこそ、聴く順番を決めておくと迷いません。本記事は1つの基準で10枚を並べています。その考え方を、先にお伝えします。

2-1. 「入門盤から技巧の粋へ」で並べた理由

本記事は、「親しみやすい入門盤を先に、技巧や自由度が前面に出る作品を後に置く」という1つの基準で10枚を並べています。年代順ではありません。大きく分けて、前半(1〜5枚目)は親しみやすいスタンダード中心の作品、後半(6〜10枚目)は自作組曲・ライヴ・ソロなど技巧と自由度が際立つ作品です。番号順に聴き進めれば、無理なくピーターソンの深みへ入っていけます。

2-2. トリオ編成の変遷という背景

ピーターソンのトリオは、時期によって編成が変わります。1950年代はドラムを置かないギター入りのトリオで、1953〜58年はハーブ・エリス(ギター)とレイ・ブラウン(ベース)の顔ぶれが続きました。1950年代末からはギターに代えてエド・シグペン(ドラム)を迎え、レイ・ブラウンとのピアノトリオが1960年代半ばまで黄金期を築きます。1970年代にはジョー・パス(ギター)やニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセン(ベース)とも組みました。編成の違いを知ると、各盤の音の重なり方の違いがより楽しめます。ピアノトリオの名手ビル・エヴァンスと聴き比べると、ピーターソンの力強さが一層際立ちます。

3. オスカー・ピーターソンの名盤10選|聴く順番

ここからは、本記事の基準に沿って代表作10枚を聴く順番にご紹介します。1枚目から順に聴き進めるのがおすすめですが、気になる作品から手に取っても構いません。各盤には、録音年・編成・聴きどころを記しました。

3-1. プリーズ・リクエスト(We Get Requests/1964年)|まず最初の一枚

レイ・ブラウン(ベース)、エド・シグペン(ドラム)との黄金トリオによる、1964年録音の人気盤です。「コルコヴァード」「酒とバラの日々」「イパネマの娘」など、誰もが一度は耳にしたスタンダードやボサノヴァを、1曲3〜5分前後にコンパクトにまとめています。親しみやすいメロディと端正な演奏で、オスカー・ピーターソン入門の決定盤とされます。まずはこの1枚から、肩の力を抜いて聴き始めてください。

プリーズ・リクエスト
プリーズ・リクエスト
¥2,228

3-2. ナイト・トレイン(Night Train/1962年)|ブルースとスウィングの入口

同じくレイ・ブラウン、エド・シグペンとのトリオで、1962年12月に録音されました。「C・ジャム・ブルース」「我が心のジョージア」など、ブルースとスウィングの小品を軽快に連ねた構成で、1曲あたりが短く聴きやすいのが特徴です。ピーターソン自作の「自由への讃歌(ヒム・トゥ・フリーダム)」も収められ、静かな感動を呼びます。スウィングの心地よさを体で覚えるのに最適な一枚です。

ナイト・トレイン
ナイト・トレイン
¥2,228

3-3. ア・ジャズ・ポートレイト・オブ・フランク・シナトラ(1959年)|歌心を映すトリオ

フランク・シナトラの愛唱歌を集め、1959年にパリで録音されたトリオ作です(ベースはレイ・ブラウン、ドラムはエド・シグペン)。歌のない演奏ながら、メロディを朗々と「歌わせる」ピーターソンの資質がよく表れています。有名曲が中心なので、ジャズ・スタンダードに親しみたい方にも向く、聴き心地のよい一枚です。

3-4. プレイズ・ザ・コール・ポーター・ソングブック(1959年)|洗練された歌曲集

作曲家コール・ポーターの名曲を、1959年にシカゴで録音したトリオ作品です(レイ・ブラウン、エド・シグペン)。「ナイト・アンド・デイ」をはじめとする洗練されたメロディを、無理なく歌い上げています。前の数枚と同じく親しみやすい歌曲中心ですが、アレンジの作り込みが一段と細やかで、トリオの一体感が深まっていく過程を味わえます。

3-5. ウエスト・サイド・ストーリー(West Side Story/1962年)|名ミュージカルのジャズ化

レナード・バーンスタイン作曲のミュージカル「ウエスト・サイド物語」の楽曲を、トリオでジャズに再構築した、1962年にニューヨークで録音された一枚です(レイ・ブラウン、エド・シグペン)。「トゥナイト」「マリア」などドラマティックな旋律を、緩急をつけて大胆に組み替えています。原曲を知っていると、技巧的な再解釈の面白さがより深く伝わります。

3-6. カナダ組曲(Canadiana Suite/1964年)|ピーターソン自作の組曲

全曲をピーターソン自身が作曲した、1964年録音の意欲作です(レイ・ブラウン、エド・シグペン)。鉄道でカナダを旅した経験から着想を得て、東の沿海州から西のロッキー山脈へと祖国の風景をたどる組曲で、生まれ育ったモントリオールの一角を描いた「プレイス・サン・タンリ」などの曲が連なります。スタンダード集とはひと味違う、作曲家としての構成力が光る一枚です。

3-7. ザ・サウンド・オブ・ザ・トリオ(1961年)|ライヴの疾走感

シカゴの名クラブ「ロンドン・ハウス」で1961年に録音されたライヴ盤です(レイ・ブラウン、エド・シグペン)。スタジオ盤よりも速いテンポとスリリングな展開が多く、三者が火花を散らすように呼応します。3-6の自作組曲から始まった後半は、ここからライヴやソロで前面に出る技巧と自由度を味わう段階に入ります。

3-8. アット・ザ・ストラトフォード・シェイクスピアリアン・フェスティヴァル(1956年)|ギタートリオの緊密な対話

ドラムを置かず、ハーブ・エリス(ギター)とレイ・ブラウン(ベース)を擁したトリオによる、1956年のライヴ録音です(発売は1957年)。ギターとピアノが細かく絡み合う緊密なインタープレイは、このトリオ編成ならではの聴きどころです。1953〜58年のこのギタートリオの最良の記録と評されることの多い、相互作用の妙が際立つ一枚です。

3-9. マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント(1968年)|ソロで味わう技巧の全貌

ピーターソン初のソロ・ピアノ作として、1968年にドイツで録音されました(MPSレーベル、「エクスクルーシヴリー・フォー・マイ・フレンズ」シリーズの一枚)。伴奏なしで両手が自在に動くソロだからこそ、高速なランと分厚い和音、緩急の付け方という技巧の全貌がはっきりと聴き取れます。超絶技巧を正面から味わいたい段階にふさわしい一枚です。

3-10. ザ・トリオ(The Trio/1973年)|晩年の自由闊達な到達点

ジョー・パス(ギター)、ニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセン(ベース)と組み、1973年にシカゴの「ロンドン・ハウス」で録音したライヴ盤です。ドラムのないこの編成で、三者が対等に即興を繰り広げる自由度の高さが魅力で、グラミー賞(最優秀ジャズ・パフォーマンス・グループ部門)を受賞しました。1961年に同じ店で録音された同名のライヴ盤とは別の作品なので、購入時は共演者の名前で確かめてください。本記事の締めくくりにふさわしい、技巧と自由が両立した到達点です。

4. 超絶技巧の聴きどころ|ピアノトリオをより深く味わう

名盤を聴くときに意識したい「超絶技巧の聴きどころ」を、右手の高速ラン、ベースとの一体感、バラードの歌わせ方の3点に絞って解説します。この順に耳を傾けると、ピーターソンの凄さが立体的に見えてきます。

4-1. 右手の高速ランとブロックコード

最も分かりやすい聴きどころは、右手が繰り出す高速で粒のそろった単音のランです。速いパッセージでも一音一音が明瞭で、リズムが乱れません。さらに左右の手で積み上げる分厚いブロックコードが加わると、ピアノ1台とは思えない厚みが生まれます。ソロ盤『マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント』では、この二つが同時にはっきり味わえます。

まずは速い曲で右手のランの明瞭さに、次に和音の厚みに耳を向けると、技巧の輪郭がつかめます。

4-2. ベースとの一体感

二つ目は、ベースやドラムと溶け合う一体感です。ピーターソンのスウィングは、レイ・ブラウンの太いウォーキングベースと噛み合うことで一層強く前へ進みます。ライヴ盤『ザ・サウンド・オブ・ザ・トリオ』では、三者が互いの音を聴き合いながら加速していく呼吸が鮮明です。

4-3. バラードの歌わせ方

三つ目は、バラードでメロディを「歌わせる」表現です。技巧派と見られがちですが、ゆったりした曲でのタッチの繊細さや間の取り方にも大きな魅力があります。『ア・ジャズ・ポートレイト・オブ・フランク・シナトラ』のような歌曲集では、速さではなく歌心が前面に出ます。速い曲と遅い曲を聴き比べると、懐の深さがよく分かります。

麻布十番でジャズと一杯を楽しむなら:TOMIJAZのご案内

麻布十番のジャズバー TOMIJAZ では、ジャズが流れる落ち着いた空間で、山崎・白州・響 ジャパニーズハーモニーといったジャパニーズウイスキーや、マッカラン12年などのスコッチを、グラスでもボトルでもお楽しみいただけます。ジントニックやサイドカーといったクラシックカクテルもご用意しています。オスカー・ピーターソンのような力強いピアノトリオの名演に、琥珀色の一杯はよく似合います。不定期でライブ演奏も行っていますので、日程・出演者はトップページのライブ情報をご覧ください。ジャズの調べとともに、大人の夜のひとときをお過ごしください。

所在地〒106-0045 東京都港区麻布十番2-8-3 ディケンズ麻布 3F
営業時間月〜水 19:00〜24:00(L.O. 23:30)/木・金 19:00〜翌2:00(L.O. 翌1:30)/土 19:00〜23:30(L.O. 23:00)
定休日日曜・祝祭日 ※土曜は不定休
アクセス東京メトロ南北線「麻布十番駅」4番出口/都営大江戸線「麻布十番駅」7番出口より徒歩3分
電話予約03-3454-5566 ※営業時間内のみ
ウェブ予約食べログ予約ページ

まとめ

オスカー・ピーターソンの名盤は、親しみやすい入門盤から技巧の粋へと順に聴き進めるのが近道です。まずはスタンダード集『プリーズ・リクエスト』や『ナイト・トレイン』で心地よいスウィングに親しみ、『ウエスト・サイド・ストーリー』や自作の『カナダ組曲』で構成の妙を、ライヴ盤やソロ盤『マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント』、そしてグラミー受賞盤『ザ・トリオ』で超絶技巧と自由闊達な演奏を堪能してください。右手の高速ラン、ベースとの一体感、バラードの歌わせ方という3つの聴きどころを意識すると、その魅力はさらに深まります。麻布十番のジャズバーTOMIJAZでも、こうした名演に寄り添う一杯をご用意してお待ちしています。

よくある質問(FAQ)

オスカー・ピーターソンの名盤はどれから聴けばよいですか?

親しみやすいスタンダード集『プリーズ・リクエスト』(1964年)から聴き始めるのがおすすめです。「イパネマの娘」など耳なじみのある曲が多く、端正な演奏で入門に最適です。そこから『ナイト・トレイン』へと進むと、スウィングの心地よさに自然と親しめます。

「超絶技巧」とは具体的に何がすごいのですか?

主に3つの聴きどころがあります。①右手の高速で正確なラン、②ベースとの一体感から生まれる力強いスウィング、③バラードでメロディを歌わせる表現です。速さだけでなく歌心も兼ね備えている点が、長く愛される理由です。

ソロ・ピアノの名盤はどれですか?

1968年録音の『マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント』が代表です。ピーターソン初のソロ・ピアノ作で、伴奏がないぶん高速なランや分厚い和音といった技巧の全貌をはっきり聴き取れます。

トリオのメンバーは誰ですか?

時期によって変わります。1953〜58年はハーブ・エリス(ギター)とレイ・ブラウン(ベース)、1950年代末から1960年代半ばはレイ・ブラウンとエド・シグペン(ドラム)が黄金トリオでした。1973年の『ザ・トリオ』ではジョー・パス(ギター)とニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセン(ベース)と組んでいます。

名盤は年代順に聴くべきですか?

本記事は年代順ではなく、親しみやすい入門盤を先に、技巧や自由度が前面に出る作品を後に置く順番で並べています。番号順に聴き進めれば、無理なくピーターソンの深みへ入っていけます。もちろん、気になる作品から聴いても問題ありません。

CDはどれを買えばよいですか?

入門なら、国内盤で手に入りやすい通常盤の『プリーズ・リクエスト』『ナイト・トレイン』あたりがおすすめです。どちらも名曲がコンパクトに詰まっており、繰り返し聴いても飽きません。

ビル・エヴァンスとはどう違いますか?

同じピアノトリオでも、ビル・エヴァンスが静けさと繊細な和声で聴かせるのに対し、ピーターソンは力強いスウィングと高速な技巧で聴かせる傾向があります。聴き比べると、それぞれの個性がより際立ちます。

麻布十番でピーターソンのようなジャズは聴けますか?

麻布十番のジャズバーTOMIJAZでは、店内にジャズが流れるなかで、ウイスキーやクラシックカクテルをお楽しみいただけます。不定期でライブ演奏も行っていますので、日程はトップページのライブ情報をご覧ください。

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この記事を書いた人

TOMIJAZ Bartenders(トミジャズ・バーテンダーズ)

麻布十番のジャズバーTOMIJAZの現役バーテンダーチーム。創業者・トミがニューヨーク20年・東京14年にわたり築いたジャズバーの歴史を、常連客からオーナーとなった株式会社Envalue代表の水野泰和が2022年11月より受け継いでいます。お酒・ジャズ・空間づくりに関する一次情報を、現場のカウンターから発信しています。

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